クリエイティブ会社の就業規則について
就業規則の意義
1.就業規則とは何か
- 労働者が会社で働く際の労働条件について文書化した定め。
- 労働者だけでなく、会社の権利・義務の内容をも決定される。
2.なぜ就業規則を作成するのか
- 法律的な義務(労働基準法第89条:常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。変更した場合においても、同様とする。)
- 組織の秩序を維持し、効率的な事業活動のため
3.就業規則作成による効果
- 社員のモラールアップ
- 優秀な人材の確保
- トラブル防止
- 統一的な管理
記載内容
1.絶対的必要記載事項
いかなる場合にも必ず記載しなければならない事項
↓
- 始業及び就業の時刻、休憩時間、休日、休暇、労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
- 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
2.相対的必要記載事項
定めるか否かは自由であるが、定めた場合には必ず記載しなければならない事項
↓
- 退職手当に関する事項
- 臨時の賃金等及び最低賃金額に関する事項
- 食費、作業用品その他に関する事項
- 安全及び衛生に関する事項
- 職業訓練に関する事項
- 災害補償及び業務外に傷病扶助に関する事項
- 表彰の種類と程度
- 制裁の種類と程度
- その他すべての労働者に適用される事項
3.任意的記載事項
記載するかどうかは自由である事項
↓
- 目的
- 社員の定義
- etc
就業規則の3つの役割
- リスク管理を徹底する
- 従業員が安心して働けるようにする
- やる気を引き出す
役割1 リスク管理の徹底
1.割増賃金
- 法定時間外労働:2割5分以上
- 休日労働:3割5分以上
- 法定労働時間内の深夜労働:2割5分以上
- 時間外労働が深夜に及んだ場合: 5割以上
- 休日労働が深夜に及んだ場合: 6割以上
2.休日と休暇の違い
- 休日:そもそも労働義務のない日
- 休暇:本来は労働義務はあるが、会社が労働義務を免除する日
- 休日が増える→年間の所定労働時間数が減る→残業代の単価が増える
3.賃金改定
- 例:昇給は毎年4月に行う。→×
- 「昇給」という表記であれば、降級ができない。
- 「賃金改定」、「昇給、降級」、「マイナス昇給」
4.退職後に不正が発覚した場合
- 退職後に懲戒解雇事由に相当するような不正が発覚した場合は、後から懲戒解雇にできないので、退職金請求権を有することになる。
- 退職金支払までに2~3ヶ月程度の期間を設ける。
- 退職後の発覚の場合には不支給または返還を求める規定を設ける。
5.就業規則の適用範囲を明確にする
6.「別規程」は、きちんと定める
- 例えば:賃金、退職金、休職、福利厚生
7.休職
- 法定事項ではない。
- 「使用者責任」を問われることもあるので、休職制度をつくり強制的に休ませる必要がある。
8.制裁の種類、程度
- 懲戒権は、懲戒の種類や事由を就業規則に明記して初めて行使できる。→列挙した上で、「その他この規則及び諸規程に違反し、又は非違行為若しくは前各号に準ずる不都合な行為があったとき」(包括的条項)を加える。
9.解雇理由
- 「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」 労働契約法第16条
役割2 安心
1.暗黙のルールをなくす
2.休暇
- 有給休暇取得のための手続き方法や慶弔休暇などを明確にする。
3.賃金
- 賃金の決定方法や支払い方法、欠勤控除の仕組みなどを明確にする。
4.災害補償
- 災害補償について明確にしておくことで、安心感を与える。
5.再雇用
- 再雇用制度を整備し、将来への不安感を軽減させる
6.育児休業・介護休業
- 育児や家族介護のための休業や職場復帰プロセスを整備し、家庭環境にかかわらずに働ける環境を整備する。
役割3 やる気
1.動機付けー衛生理論
- 衛生理論:会社の方針、管理方法、作業環境、就労条件、給与、人間関係→従来の就業規則
- 動機付け:仕事の達成感、仕事に対する責任、昇進、自己の成長→これからの就業規則
2.欲求5段階説
- 生理的欲求→安全・安定欲求→社会的欲求→自尊欲求→自己実現欲求
3.どんな規定が必要か
- 従業員に責任や権限を与える規定
- 仕事の達成感を覚えさせる規定
- 仕事の成果を評価する規定
- 会社への帰属意識を高めるための理念
4.裁量労働制の導入
- 仕事を進める手段や時間配分の決定などについて社員の裁量にゆだねることで、実働時間ではなく、あらかじめ定めた時間について労働したものとみなされる制度。労働時間ではなく作品の質によって業績を判断されるクリエイターには適している。