クリエイティブビジネスサポート>解説>社長も入れる労災保険

クリエイティブビジネスサポート 松尾社会保険労務士事務所

社長も入れる労災保険 ―中小企業の事業主等の特別加入制度―

 労災保険は、国が労働者の業務災害または通勤災害に対して保険給付を行い、労働者を保護することが本来の目的です。このため、労働者として扱われない企業経営者や役員などは労災に加入することができません。
 しかし、中小企業の企業経営者や役員なども、労災保険に加入する方法があります。それが、労災保険の特別加入制度です。

1. 特別加入のメリット

 (1) 医療費の自己負担はゼロ
 (2) 働けなくなったときの所得補償がある
 注:業務上または通勤途上の事故に限られます。

2. 特別加入者の範囲

 特別加入できる会社は、次の通りです。
 (1) 金融業、保険業、不動産業、小売業:従業員数50人以下
 (2) 卸売業、サービス業:従業員数100人以下
 (3) 上記以外の事業:従業員数300人以下

3. 保険給付の概要(すべて、業務災害または通勤災害の場合に限られます)

 (1) 医療費がかかったとき:必要な治療が無料で受けられる
 (2) 傷病の療養のために働くことができないとき:あらかじめ設定しておいた給付基礎日額の80%
 (3) 障害が残ったとき(重い障害の場合):障害の程度に応じて、給付基礎日額の313日分から131日分の年金+一時金
 (4) 障害が残ったとき(軽い障害の場合):障害の程度に応じて、給付基礎日額の503日分から56日分の一時金+αの一時金
 (5) 死亡したとき(生計を維持されていた遺族がいる場合):遺族に対して、遺族の数に応じて、給付基礎日額の245日分から153日分の年金+300万円の一時金
 (6) 死亡したとき(生計を維持されていた遺族がいない場合):遺族に対して、給付基礎日額の1,000日分+300万円の一時金
(7) 介護が必要になったとき:介護費用の全部または一部
 (8) 他に傷病が長引いているときや、葬祭のための給付があります。

4. 費用

 特別加入のための費用として、主に以下のものがあります。
 (1) 特別加入保険料:あらかじめ設定する給付基礎日額をいくらにするかによって異なります。給付基礎日額は、3,500円から20,000円まで13段階あり、給付基礎日額が高いと補償も厚くなりますが、保険料も高くなります。
   特別加入保険料=給付基礎日額×365×労災保険料率(事務的な業種は0.45%)
 (2) 労働保険事務組合委託費用:特別加入するためには、労働保険事務組合という団体に委託しなければなりません。労働保険事務組合は数多くあり、委託手数料も様々です。

 以上、簡単に中小企業の事業主等の特別加入について説明いたしました。労災保険は保険料負担が軽いので、現場にでることの多い経営者や役員の方々は、活用を検討されてはいかがでしょうか。